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こんにちは、エブリスタ編集部です。


小説投稿サービス『エブリスタ』と文春文庫がコラボし、3回に分けて行われた新人作家養成プロジェクト『バディ小説大賞』。

第3回『キーアイテム』の結果が発表されました。
「バディ」「キーアイテム」という二重の縛りに苦戦した応募者の方も多かったのではないでしょうか。


テーマに隠された意図は? 面白い小説を書くのに「キーアイテム」は必要?
文春文庫の編集者・
山下奈緒子さん(以下、敬称略)にインタビューしました。




共感を呼べる「キーアイテム」で作品が魅力的になる

――3回の選考、お疲れ様でした。あらためて、「お仕事」「ロケーション」「キーアイテム」それぞれのテーマの意図をお教えいただけますでしょうか。

山下:それぞれ、今の小説界において人気のあるテーマであり、小説の構成要素としても重要なものです。
「お仕事」は「お仕事小説」という一大ジャンルでコーナーができるくらい、多種多様な作品がでていますし、「ロケーション」は、「聖地巡礼」などで、発展性のあるテーマです。
「キーアイテム」はひとつのアイテムからどれくらいの物語を生み出せるか、という力量を測りやすいテーマですね。

――「キーアイテム」を使って作品を魅力的にするにはどんなところに気をつければ良いですか。

山下:先の質問とも重なりますが、アイテムそのものが印象的だったり、身近な日常的なアイテムを意外性のある使い方をして、どうやって物語を大きくふくらませるか、あるいは深く掘り下げられるか、というところで、筆者の方の物語の創造力が図れると思います。一般的には、読者の共感を呼べるようなアイテムを選択し、そこから独自性をつけて、物語を展開するとよいと思います。今回の受賞作「繭玉」というレアなアイテムが冒頭から登場し、読者の興味をそそるつくりになっていました。

――第1回受賞作『BURNT OUT ROOM』第2回『DADA?』にもキーアイテムは登場しましたか。
山下:BURNT OUT ROOMでは、消防士と刑事のコンビによる火災の捜査で、VR機器、「DADA?」では画商が主人公ということで現代アート作品がキーアイテムになっていました。


受賞するために…大切なのは「独自性」

――「バディ小説大賞」に集まった作品にはどんな特徴がありましたか。
山下:若い読者を意識した、軽やかな作品が集まったと思います。また、キャラクターや物語の設定も、いい意味でライトで明るく、読んでいて楽しかったです。

――落選した作品に足りなかったものは何だと思われますか。
山下:既視感が強いと、受賞作として推しにくい、という側面があります。ラノベ的なお約束のキャラクター同士の応酬にも、気の利いたユニークなセリフを散りばめたり、あるいは、キャラクターの色付けを少し変えるなどの工夫が必要だと思います。“お約束”は読んでいて安心感はありますが、その分丁寧な描写が必要になりますし、独自性ということは常に意識していってほしいと思います。


バディ小説を書くための必読本は?

――バディ小説を書くならこれだけは押さえておけ!というオススメ作品があれば教えてください。
山下:小説はやはり「名探偵ホームズ」でしょうか。ドラマ「シャーロック」のヒットをはじめ、ホームズとワトソンのキャラクターが繰り返し小説や映像になっています。オリジナルの小説を改めて読むと、読みつがれる名作のエッセンスから得るものがあると思います。また、有栖川有栖さんの火村教授のシリーズ。阿部智里さんの八咫烏シリーズの「烏は主を選ばない」「黄金の烏」などは主従関係を越えたバディ感を楽しめると思います。
映像ではズバリ、ドラマの「相棒」シリーズ。水谷豊さんとコンビを組む相棒がシリーズによってまったくキャラクターが違い、それによって作品のテイストも変わっているので、キャラクター作りやストーリー展開を学べると思います。

――これからバディ小説を書かれる方にアドバイスをお願いします。
山下:相棒の二人という人間関係の最小単位から始まる物語をどう作るか、というスタート地点で、小説全体の構成をどこまで広げていくかを、ある程度練っておくとよいと思います。また、二人の関係性を書くときに、それが、自分の中でのお約束であっても、そのバディを、どういう関係なのか、お互いどう思っているのか、などが読者にきちんと説明されていることが必要です。シリーズものとして書かれている方は特にそこに注意を払っていただきたいと思います。


――ありがとうございました!




受賞された方も、惜しくも受賞を逃した方も今後の執筆に参考にしてみてくださいね!
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